近年、環境問題や社会問題への意識が高まる中で、「エシカル消費」という言葉を耳にする機会が増えてきました。でも、実際にどのような選択が「エシカル」なのか、どうすれば日常生活に取り入れられるのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか？

この記事では、日本発のエシカル・サスティナブルをテーマにしたセレクトショップ「style table（スタイルテーブル）」を通して、エシカル消費の意義と実践方法についてご紹介します。

エシカル消費とは？なぜ今必要とされているのか

エシカル消費とは、「人と社会、地球環境、地域のことを考慮して作られたモノを購入・消費すること」を指します。単に「良いものを買う」だけでなく、その商品がどのように作られ、誰によって、どのような環境で生産されているのかまで考慮した消費行動のことです。

では、なぜ今このエシカル消費が注目されているのでしょうか？その背景には、深刻化する地球環境の問題があります。

• 2050年には海のプラスチックごみの量が魚の量を超えるという予測
• 30年間で日本5つ分の森林が消失している現実
• 気候変動による北極の氷の減少
• 子供の労働問題

これらの問題に対して、私たち一人ひとりが日常の消費行動を通じて解決に貢献できる——それがエシカル消費の核心です。

style tableが描く「エシカル消費」のビジョン

style tableは「自分と周りと地球に優しく生きる」世の中の実現を目指し、2019年8月に代官山店からスタートしました。株式会社フラッグが運営するこのセレクトショップは、現在全国各地に店舗を展開しています。

style tableが大切にしているのは次の3つです：

1. 正しい情報を知るきっかけの提供：店舗展開やメディア発信を通じて、消費者が環境や社会について正しい情報を得られる場を作ること
2. 生産者と消費者を繋ぐ架け橋：良いものを作る生産者とエシカルに関心のあるお客様を繋ぎ、自分と周りに優しい選択ができる場の提供
3. こだわりの商品開発と提供：エシカル・サスティナブル・オーガニックにこだわり抜いた商品の開発と提供

特に優先されているのは、「オーガニック」「プラスチックフリー」「ヴィーガン」の3つの価値観です。これらを軸に、美しい地球環境と健康な社会が共存する未来を目指しています。

わかりやすく示す「7つのエシカルテーマ」

エシカル消費というと、「何をしたらいいかわからない」「わかりづらい」という声をよく耳にします。style tableではこの課題を解決するために、エシカル消費を7つのテーマで表現し、一目でわかるように工夫しています。

1. 国産

国産の商品を購入することで、輸送時のCO2排出による環境汚染の抑制につながります。日本の厳しい品質基準のもとで作られた製品は、安全性も高く、地域経済の活性化にも貢献します。

2. プラスチックフリー

プラスチックの使用を減らすことで、自然に還らないごみを削減し、海洋汚染の防止につながります。代わりに再利用可能な素材やバイオマス由来の素材を使った製品を選ぶことが大切です。

3. オーガニック

化学肥料や農薬を使わず自然の力で育てられたオーガニック製品は、使う人はもちろん生産者や土壌、他の生態系への配慮につながります。食品だけでなく、コスメや衣類など幅広い商品カテゴリーでオーガニックを選ぶことができます。

4. 気候変動対策

温室効果ガスの削減に取り組む商品を使うことで、気候変動に伴う様々な災害の抑止につながります。カーボンニュートラルを目指す企業の製品を選ぶことも、間接的な貢献になります。

5. ヴィーガン

日常生活において動物由来のものを控えることで、動物の命と地球の環境に配慮します。食品だけでなく、化粧品や衣類など、様々な製品でヴィーガン対応のものが増えています。

6. フェアトレード

適切な対価を支払う仕組みを支援することで、途上国の持続可能な発展につながります。生産者が正当な報酬を得られることで、児童労働などの問題解決にも貢献します。

7. 自然由来成分

石油由来成分や化学物質を極力排し、自然のものを使うことで、環境に配慮します。肌にも優しく、使用後も環境に負荷をかけにくいという利点があります。

これらのテーマは商品のプライスタグにアイコンで表示され、お買い物をする際にどのようなエシカル消費につながるのかを一目で確認できるようになっています。

エシカル市場の動向と可能性

エシカル消費は世界的なトレンドとなっています。イギリスではエシカル消費の市場規模が2021年に19兆円相当に達し、ここ数年で大幅な成長を遂げています。

日本でも消費者庁のデータによると、エシカル消費への興味は2016年から2019年にかけて64%ほど増加し、実際にエシカル消費を経験した人も25%増加しています。まだ海外に比べると市場規模は小さいものの、確実に広がりを見せています。

特にオーガニックコスメ市場は年間成長率5.0%と予測されており、今後さらなる拡大が期待されています。

日常生活にエシカル消費を取り入れるための第一歩

エシカル消費を始めるのに、生活を大きく変える必要はありません。まずは小さな一歩から始めることが大切です。

1. 自分の価値観を振り返る

何を大切にしたいのか、どんな社会問題に関心があるのかを考えてみましょう。環境問題、動物愛護、公正な労働環境など、自分が共感できるテーマから始めると長続きします。

2. 商品のラベルや説明を確認する習慣をつける

買い物の際に、商品の原材料や生産方法、認証マークなどを確認する習慣をつけましょう。style tableのように7つのエシカルテーマでわかりやすく表示されていると選びやすいですね。

3. 一つの商品カテゴリーから始める

いきなり全てをエシカルに変えようとすると負担が大きいです。まずは日常的に使う洗剤や化粧品など、一つのカテゴリーから始めてみましょう。

4. 長く使えるものを選ぶ

「安くてすぐ捨てる」よりも「少し高くても長く使える」ものを選ぶことも、立派なエシカル消費です。品質の良いものを大切に使うことで、結果的にゴミの削減につながります。

5. 学びの機会を活用する

style tableでは様々なワークショップやイベントを開催しています。例えば、海洋プラスチックアクセサリー作りや、みつろうラップ作りなどの体験を通して、エシカル消費の意義を実感できます。

エシカル消費のその先へ：コミュニティとしての取り組み

エシカル消費は個人の選択だけでなく、コミュニティとしての取り組みも重要です。style tableでは、単に商品を販売するだけでなく、様々な活動を通じてエシカルな価値観の普及に努めています。

インスタライブで生産者と消費者を繋ぐ

インターネットであらゆる情報が手に入る時代だからこそ、生の声をお届けすることが大切だと考え、インスタライブを通じて生産者と消費者を直接繋ぐ取り組みを行っています。これにより、消費者はより深く商品の背景を知ることができ、生産者にとっても消費者の声を聞く貴重な機会となっています。

ビーチクリーン活動

2ヶ月に一回のペースでビーチクリーン活動を実施しています。参加者の8割以上が「ビーチクリーンに初めて参加する」方々で、実際に海岸のゴミを拾うことで環境問題を身近に感じる機会となっています。「海のごみは川から、川のごみは街から、街のごみは人の心から」という言葉の通り、まずは意識を変えることから始めています。

エシカル消費が私たちにもたらすもの

エシカル消費は単に「環境や社会に良いから」という理由だけでなく、私たち自身にも多くのメリットをもたらします。

1. 健康的な生活

オーガニックや自然由来成分の製品を選ぶことで、有害な化学物質の摂取を減らし、より健康的な生活を送ることができます。

2. 本物の価値への気づき

大量生産・大量消費の時代に失われがちな「本物の価値」に気づくきっかけになります。手間暇かけて作られたものの良さを再認識することで、物を大切にする心が育まれます。

3. 満足感と充実感

「自分の消費行動が社会や環境の改善に貢献している」という満足感は、心の充実につながります。安さや便利さだけでなく、社会的価値も含めた「本当の豊かさ」を感じられるようになります。

4. 未来の子どもたちへの贈り物

ネイティブアメリカンの言葉に「我々は7世代先の子どもたちのために、今なにをしなければならないか考えて行動する」というものがあります。エシカル消費は、未来の世代に美しい地球を残すための具体的なアクションなのです。

「意志をもった選択」が創る未来

style tableが掲げる理念の一つに「意志をもった選択をするきっかけとなるブランドを目指す」というものがあります。物質的な豊かさに溢れている現代社会において、私たちは「選び取る自由」を手に入れました。同時に、その選択に「意志」を持つことが求められているのです。

自分が何を大切にしたいのか、どんな未来を望むのか——その価値観を反映した消費行動が、少しずつ社会を変えていきます。一人ひとりの小さな選択が、やがて大きなうねりとなって世界を変える力になるのです。

style tableは、そんな「意志をもった選択」をするきっかけを提供し続けています。エシカル消費は決して「我慢」や「制限」ではなく、より豊かで美しい未来を選ぶための積極的な行動なのです。

まとめ：小さな一歩から始めるエシカル消費

エシカル消費は難しく考える必要はありません。まずは自分の生活の中で、一つでも「意志をもった選択」を始めてみませんか？

• 買い物の際に商品の背景を少し意識してみる
• プラスチック製品の代わりに再利用可能なものを選んでみる
• 地元の生産者の商品を応援してみる

そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな変化を生み出します。style tableのような場所を訪れて、実際に商品を手に取り、スタッフと話すことで、エシカル消費のヒントが見つかるかもしれません。

「自分と周りと地球に優しく生きる」——それは特別なことではなく、日々の小さな選択の中にあるのです。明日からのお買い物が、少し違って見えるきっかけになれば幸いです。